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戦火の生贄
戦場での陵辱劇をテーマにした小説を中心にしています。※18歳未満は閲覧禁止
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戦火の生贄~記憶~


 「それまで!」
 老齢になる師範の声で、木剣を携えた二人の男は、ぴたりと動きを止めた。
 一人は屈強な体格のいかに闘士といった男、対するは未だあどけなさの残る少年といった容貌。
 だが、相手の喉もとに切っ先を突きつけているのは、明らかに体格で劣る少年の方であった。
 「ふむ、その歳で駆け引きの妙を知り、力を技術で圧倒するとは、いや見事である。」
 少年は師範の賛辞を事もない様に木剣を収め、相手に対し礼を取ると師範に向き直る。
 「師範の厳しい指導のあればこそで御座います、願わくば次の遠征には、是非とも末席にお加え頂きたく申し上げます。」
 少年の言葉に、師範は白い顎鬚に手を当て、むぅと考え込む。
 「いささか初陣には早い気もするが…例がない訳でもなし、お主の技量であれば……よかろう、陛下にはワシより上申しておく、今暫く鍛錬に励み待つがよい。」
 「…は。」
 少年は下がり、騎士見習いの仲間達の下に戻って行く、同じ年頃の少年たちは歓声で彼を迎えるが、当の少年はどこか冷めた風であった。
 
 少年は、帝国の地方を治める領主の息子である。
 母親の亡き後、父親の進めで中央に入り、現在は騎士見習いの身分になる。
 決して体躯に恵まれた訳ではなかったが、かつて英雄と謳われた師範の下、砂が水を吸い込む様にその技術を己のものとして、今や膂力に優れる年上の少年をも圧倒するまでになっていた。
 皆が目を見張るその才は、剣術にとどまらず兵法にまで至っていた。
 古今の兵書史書より兵法を身に付け、模擬先においては見習いの弱兵を率いて、騎士候補の強兵に奇襲を仕掛けては散り散りに蹴散らす有様である。
 しかし、未来の将軍と言われる程に称えられ如何な賛辞を送られても、それは彼を熱くさせる物ではなかった。
 年頃の少年であれば、多少浮かれても致し方ないものである。
 それでも彼は、剣術の試合で勝とうと戦術論で圧倒しようと、喜ぶでもなく誇るでもなく、ただ鍛錬に勤しんでいた。
 
 後日、少年は師範の下に呼び出された。
 師範が言うには、申し出が受理されたので二月後の地方遠征に従軍せよとの事であった。
 「一度国に戻って、お父上に報告してくるがよかろう。」
 師範の申し出に少年は頷き、早々に旅支度をすると、馬を走らせる。
 彼が国を出てから、二年後の事であった。

 少年の故郷は帝国の地方領、その山裾にある城砦に居を構えていた。
 「よく戻ってきたな、壮健であったか?」
 「はい、父上もお変わりなく。」
 いや、二年前に比べると、幾分痩せたかもしれない、顔の皺も深くなり髪にも白いものが増えた様だ。
 領主として、辺境の蛮族からこの土地を守り続けてきた父の強健な姿が、以前よりも小さくなった気がする。
 「初陣だそうだな、はは…歳は取りたくないものだ、稽古の一つもつけてやりたいが、今の私では相手にもなるまい。」
 「いえ、そのような事は…」
 「良い良い、自分の身体の事だ、己が良く分かっているわ。」
 弱気とも取れる言葉と裏腹に、父は満面の笑みを浮かべた。
 幼き頃より、領主の跡取となるべく、厳しく育てられた少年にとって、それは随分と久しぶり見る父の笑顔であった。
 「だがな息子よ、老いたとはいえ私も幾度となく蛮族の進行を退けてきたものだ、お前が一人前になる間ぐらいはこの地を治めて見せようぞ。」
 「色々と話は聞いておる、お前は私の誇りだ、陛下のため存分にその剣を振るって来るがよい。」
 そう言って、父は剣を握り続けた固い手で、力強く少年の肩を叩く。
 普段、何事にも動かぬ少年の心が、珍しく熱く震えているのを感じていた。
 「マリアにも会って行け、近頃は益々あやつに似てきてな、私の生活にまで口を出す様になってきおった、あれも誰に似たか中々に頑固でな、お前からも一言いっておいてくれ。」
 「何せ、昔からお前の言う事だけは、聞くからの。」
 そう笑うと、父親は領主の顔に戻り、息子を送り出すのだった。

 少年が二年振りの私室に戻り扉を開けると、そこには一人の少女が立っていた。
 清楚な造りの白いドレスに、絹糸の様な長い髪を泳がせた美しい少女。
 彼女は、蒼く澄んだ瞳で少年を見つめると、ゆっくりと目の前に歩み寄る。
 「おかえり…なさい。」
 少女は穏やかに微笑むと、そっと少年をその胸に抱きしめた。
 「ただ今戻りました…姉上…」
 少年は、そのまま柔らかな胸に身を任せる、その顔には年頃の少年らしい笑顔が浮かんでいた。
 初陣を前に、故郷に戻ってきた一番の理由、それはこの3歳年上の姉に会う事であった。
 二年振りに見る姉は、以前にも増して美しく、僅かにあどけなさを残してはいるものの、蛹が蝶になるように淑女に変態を遂げていた。
 しかし、それでも愛おしく弟を抱きしめるその仕種は、二年前と変わる事はない。
 領主の跡取となるための厳しい教育、幼い頃は父との剣の稽古で生傷が絶える事はなかった。
 幼い少年が傷だらけになって戻る度に、マリアは優しく抱きしめ傷の手当をしたものだった。
 領主の息子という立場は理解していたし、父が厳しくも息子を愛している事は分かっていたが、それでも唯一自分を抱きとめてくれる姉の存在に、一体どれほど救われたものだったろうか。
 「立派に、なりましたね。」
 ゆっくりと、穏やかな声でマリアが語りかけた。
 「はい、姉上もお元気そうで何よりです。」
 「まあ、すっかり騎士様の様になって、可愛い弟が大人になって行くのは寂しいものだわ。」
 くすくすと笑うマリア、そんな姉の姿が見れただけでも帰って来て良かったと思う。
 「姉上…からかわないで下さい、自分とて一刻も早く、父上の後を継ぎ戻るために…」
 「戦に出るのですってね…」
 一変してマリアの顔が悲しげに曇る、この優しい姉は戦を好まない少女であった。
 「仕方…ありません、此処も含め国境付近では、常に隣国との小競り合いが続いています、それに自分が一人前と認められるには、戦場で手柄を立てるのが一番早いのです。」
 弟の気落ちした声に、マリアは顔を上げると、再び愛する弟をその胸に抱き抱えた。
 「ごめんなさいね…でも、ゆっくり…ゆっくりでいいから、お願いですから無事に帰ってきてちょうだい。」
 縋るような姉の言葉に、弟もまたその背を抱きしめるのだった。
 「はい…必ず…必ず無事に帰って参ります。」
 こうして、少年は別れを惜しみつつ中央に戻るも、早々に初陣の地へと出陣して行った。

 少年の初陣は、辺境の小さな街であった。
 「文武に優れているとはいえ、まだ歳若い少年じゃ、先ずは戦を経験してみるがよかろう。」
 中央の人事とはいえ、戦功を欲する少年にはいささか納得のいかない配置であった。
 敵は帝国の領土となるのを拒み続けている街に過ぎない、おそらくは街を守っているのも民兵ばかりで、手柄になる首など望むべくもない。
 味方の三軍も、正規の兵で編成されているのは中央の一軍のみで、他の二軍は傭兵隊で編成されている。
 そして当の少年は、士官枠として左翼の傭兵隊の中に組み込まれていた。
 要するに「そこで見ていろ」という事だ。
 「よう、お若いの初陣で緊張してんのかい?」
 傭兵の一人が少年に声を掛ける、騎士見習いの少年が傭兵隊の先陣に立っているのが珍しかったのだろう。
 「まぁ、気楽にしてなって、どうせオイシイ所は正規軍が持ってくつもりだな。」
 貧乏クジを引いたとばかりに、おどける傭兵。
 一方、少年はと言うと、特に緊張もなければ、戦意の昂ぶりもなく、ただ両の眼で戦場を見渡していた。
 
 突撃の喇叭が鳴り響き、戦闘が開始された、右翼左翼はそのままに中央の本体が、街に攻撃を開始する。
 街の入口は過去の戦闘での瓦礫が積み重なっており、何とも見通しが悪い。
 嫌な地形だなと思う少年を余所に、先陣の騎馬隊が駆け上がる。
 しかし、街の入口を目の前に騎馬隊の前に、瓦礫に偽装してあった馬防柵が展開された。
 たかが民兵と馬鹿にしていた騎馬隊は次々に脚をとられ転倒し、民平達の持つ槍の餌食となる。
 出鼻を挫かれた本体は混乱に陥っていた、見れば指揮官は退却を指示している、一度下がって態勢を建て直すつもりか。
 「突撃だ!」
 不意に少年が声を上げた、傭兵達は突然の事に呆気にとられて少年を見ている。
 「おい、坊主何を言ってる!?」
 少年の隣にいた傭兵が声を掛けるが、少年は構わず続ける。
 「何をしている、突撃だ!敵は馬防柵で騎馬隊を止めただけ、数ではこちらが圧倒しているぞ!全員歩兵となって突撃だ!」
 そう言うと、少年は先頭に立って戦場に歩を進める。
 「今こちらが引けば、敵は防御を固めるぞ!左翼傭兵隊は自分に続け!」
 戦場を塒に生きて来た傭兵達は、少年の意図を素早く理解した。
 速度は、戦における重要な要素である、無秩序に集まっていた傭兵隊は、即座に訓練された正規軍より素早く隊列を組み、少年の後に続く。
 
 少年は、まるで散歩にでも出掛ける様な足取りで戦場に歩み入る。
 目の前に立ちはだかる民兵が、少年に槍を突き出す…が、少年はその槍先を剣で軽く捌くと、次の瞬間その切っ先は民兵の喉を貫いていた。
 ずぶりと剣が肉にめり込む感触の後、なま暖かい返り血が少年の頬を塗らす。
 初めて戦場で人を殺した、どくんと心臓が跳ね、ぞわりとした感覚が背中を抜けて行く。
 訓練ではない生の感覚に身体が熱い、なのに頭はどこまでも冷静で五感は鋭敏に研ぎ澄まされる。
 少年は立ちはだかる民兵を次々と切り倒しながら進んで行く。
 手にした剣が肉を抉り、断末魔の声と返り血を浴びる度に、血が滾り身体が焼ける様に熱くなる。
 
 敵の防御を穿つ少年の後を追う様に、傭兵達突撃する。
 「やるじゃねえか若大将!このまま手柄はいただきだぜ!」
 荒々しく剣を振るう傭兵達は、守りを固めようとする民兵達を圧倒すると、そのまま街になだれ込む。
 最早、雌雄は決していた、既に民兵の大半は討ち取られ、残る抵抗も潰されるのは時間の問題だった。
 少年は、止まる事無く街中に歩を進める。
 熱く滾る体は更なる敵を求め、冷たく研ぎ澄まされた五感は、対する敵を刈り取って行く。
 気が付けば、街は炎と悲鳴に溢れていた、だが今はそれが何とも心地良い。
 
 少年が民家の前に歩を進めた時、瓦礫の影から影が飛び出した。
 「くたばれ!帝国軍め!」
 民兵ではない中年の男、彼の手にした鋤が少年を襲う。
 だが少年は、眉一つ動かさずに鋤をかわすと、剣を横薙ぎに払った。
 目の前で、頚動脈を切り裂かれた男が、大量の血を噴出し倒れる。
 民間人を手に掛けた…騎士としては恥ずべき行為ど聞いたが、少年は何も感じなかった。
 ただ身体が熱い、これでは足りない、こんな事でこの熱は収まらない。

 次の獲物を探す少年の耳に、女の悲鳴が響く。
 どうやら、目の前にある民家の中からだ、少年は無造作に扉を開けると、家に立ち入った。
 「いやあああっ!やだあ、もうやめてええっ!」
 中では、一人の少女が傭兵に組み敷かれていた。
 よく見れば、まだ年端も行かぬあどけない少女、そのか細い腕は別の傭兵に押さえ付けられ、汚い尻を丸出しにした傭兵が少女の脚を抱え、赴くままに陵辱している。
 「おお!こりゃあ、英雄サマのお出ましだぜ!」
 少年の姿に気付いた傭兵が、声を上げる。
 「アンタ、大したモンだぜ、あれで初陣だってんだからなあぁ。」
 「おい、さっさと終わらせろや、英雄サマが待ってるぜ。」
 「ああっ!もう少しだっ!ほらよっ!」
 少女を犯してる傭兵は体重を掛けると、小柄な少女を押し潰さんばかりに腰を打ち付ける。
 「あぐぅっ!あっ!いたっ!あうっ!」
 身体を仰け反らして逃れようとする少女を、傭兵は容赦なく責めたてる、そして、その細い腰を掴んで少女の奥まで打ち込むと、汚い尻を震わせた。
 「あ…ああ……いやあ…気持ちわるいの…でて…」
 少女は、うわ言の様につぶやいて、ぐったりと横たわる、笑顔であればさぞ愛らしいであろう顔は、涙でくしゃくしゃになっている。
 
 「これは…略奪は、許可されていなかった筈だが…」
 少年の口から、自然とこぼれた言葉、ただ教え込まれた騎士の心得、しかし、少年は自らが口にしたその言葉に、何の意味も感じなかった。
 同時に、傭兵達は互いに顔を見合わせると、大声で笑い転げた。
 「は…はは…こ、こりゃあいい、さすがは騎士サマだぜ。」
 「はひ…ひひひ…若大将、こりゃあ俺達の取り分って奴ですぜ。」
 「取り分?」
 「そうでさ、俺達傭兵に命を掛ける程の給金なんて、出やしねぇからな、こういうのも戦場では暗黙の了解ってヤツでさあ。」
 「それに若大将、アンタだって分かってる筈でさあ、人を切った後の猛りはちょっとやそっとじゃ収まらねえってね。」
 傭兵の男に指差されて少年は始めて気が付いた、焼ける様に火照る身体、その下半身の一部がかつてない程に固くいきり立っている事に。
 少年は床に横たわる少女に目を向ける、乱暴に引き裂かれた服から覗く膨らみかけの乳房、未だ産毛も生え揃わぬ割れ目は陵辱の跡も生々しく、奥からはその未成熟な胎内を汚した男の精が溢れている。
 あどけない少女の無残な姿、暴力によって蹂躙されたそのか弱い姿に、少年は興奮を隠し切れなかった。
 「くくく…アンタやっぱりこっち側の人間だよ、折角の初陣だ、全部経験しときな。」
 そう言って、傭兵は少女の上半身を押さえ込む。
 「い、いや…やめて、こないで…」
 少女は怯えるが、その身体は傭兵の男に束縛されている、少年はゆっくりと少女の脚に割り入ると、熱く滾った肉棒をその割れ目にあてがった。
 「やだ、いやいやっ、もういやなのぉっ!」
 頭を振って必死になる、少女の悲鳴を心地良く感じながら、少年は一気に貫いた。
 「うあああっ!、痛いっ、いたいのぉっ!ひぐっああぁっ!」
 既に処女ではないとはいえ、未成熟な狭い秘洞を、己の肉棒で割り裂く様に貫いて行くのは最高だった。
 少年は身体の火照りをぶつける様に、少女を責めたてる。
 膨らみかけの乳房を力任せに掴んでは、乱暴に腰を打ち付け、そして、少女の狭い最奥の未成熟な子宮まで蹂躙すると、焼ける様な熱い精を叩きつけた。
 「あぎいいいぃぃぃっ!なかに…あついのぉっ!…はっ…ひっ……ひ…」
 少女は、胎内に熱い塊を受け、身を仰け反らすと目を剥いて痙攣した。
 薄い胸がゆっくりと上下しているものの、既に意識をなくしている少女、しかし、少年の火照りは未だ収まらず、再び少女にその滾りをぶつけて行く。
 「ひひひ…やるねえ若大将、やっぱアンタ最高だわ。」
 傭兵の声も気に掛けず、華奢な身体を貪る少年、少女は糸の切れた人形の様にかくかくと身体を揺らす。
 「いい事を教えてあげまさぁ、壊れた女はね、こうやって遊ぶんでさ。」
 そう言って、傭兵は少女の細い首に少年の手を導く。
 「かはっ!……は…あ…」
 少年がその手に力を入れると、ぐったりとしていた少女が反応する。
 少女の生を求める本能を弄びながら、引き攣る秘洞を割り裂きながら、少年は再び熱い迸りを吐き出していった。

 咄嗟に傭兵隊を動かした機転、そして真っ先に敵陣を切り裂いた少年の勇猛さは、すぐに正規軍の知る所となった。
 しかし、当の少年は自らの噂を気にした様子もなく、直ぐに次の戦地を求めていた。
 正規の兵を必要とせず、各戦地において傭兵団を率いては、その獰猛さと機動力を生かした神出鬼没の戦いで、次々に敵を撃破して行った。
 目を見張る少年の活躍に、正式に騎士の名を与えるべしとの声もあったが、彼が戦を売り物にする傭兵達と懇意にしている事や、戦地において略奪行為を堂々と容認している等の噂が、彼の騎士団入りを保留としていた。
 実際、それは噂ではなかった、少年は略奪行為を容認する事で、傭兵達の士気を維持し、彼等も常勝の指揮の元でお宝にありつけるあって、よく働いていた。
 そして何よりも、今や少年にとっては、殺戮と蹂躙こそが唯一、彼を熱くさせるものであった。
 戦地に立って、卓越した剣技で敵の命を穿つ度に、身体は熱く五感は冴え渡る。
 そして、その熱さを略奪において、女にぶつけるのが通例になっていた。
 村や街を戦場として、娘達を陵辱し。
 時には、通り掛かりの民家で徴発を行った。
 気が付けば、彼は中央に居るより、戦地をまわっている時間の方が長くなっていた。

 そんな少年が、久しく中央に戻った折、彼は腰を落ち着ける間も無く、かつての師範に呼び出された。
 「ご無沙汰しております、師範殿にはご機嫌麗しく…」
 「貴様…一体何をしておる…」
 師範の言葉に少年が顔を上げると、師範が目に見える程の怒気を発していた。
 「は、陛下の恩為、辺境を回り帝国に仇名す者を、駆逐して参りました。」
 「このたわけが!戦に溺れ、守るべき者を忘れるとは何事じゃ!!」
 老齢とは思えぬ師範の一喝に、周囲の空気がびりびりと震えていた。
 「既に一週間前、貴様の父君の城に対し、蛮族共が総攻撃を加えたとの報告が入った。」
 「中央の本体は、隣国との関係が危うい今は動かせぬ、そんな時貴様は何をしていた!」
 師範の言葉に、少年は血の気が引くのを感じていた。
 「そ、それで、父上と姉上は…」
 「わからぬ、老齢とはいえ、貴様の父君もかの地を守り続けてきた勇者、みすみす倒れるとは思わぬが。」
 そこまで聞くと、少年は部屋を飛び出した、剣を取り馬に飛び乗ると、故郷へ向けて駆け出して行く。
 「あやつの性を見抜けなんだのは…わしの責任かもしれぬ…なんという事か…」
 
 少年は、昼夜駆け既に馬の脚も限界となった頃、ようやく見慣れた山裾が現れた。
 代々に渡り、帝国に仇名す敵よりこの地を守ってきた城砦。
 しかし、今やその砦からは、幾筋もの煙が立ち昇っているのが見える。
 少年は、既に汗にまみれた馬に更に鞭を入れ、砦へと駆け上がる。
 「おい!貴様どこへ行く!」
 城門の前には5人ばかりの兵がいた、何れも蛮族の兵士達である、単騎で駆ける少年に対して大した警戒はしていない様だ。
 「どけっ!」
 少年は、城門を塞ぐ2人を素早く切り捨てると、砦に駆け入る。
 ようやく中庭にたどり着いた時、遂に力尽きた馬がどうと倒れた、少年は咄嗟に飛び降りたが、騒ぎを聞きつけた敵兵が少年の下に殺到する。
 「死にたくなくば、道を空けろ!」
 そう叫ぶと、少年は真っ直ぐ砦の中に駆けていく、幾人もの兵士が少年の前に立ち塞がるが、その全てを切り捨てながら少年は駆ける。
 屍の路を築きながら進む少年、卓越した剣技を持っているとはいえ、単独で多くの兵を屠ってきた少年もまた満身創痍の状態であった。
 いつもであれば、敵を斬る度に熱く火照る身体も、今は痛みと疲れに重く感じるだけである。

 ようやく追っ手を退けると、一変して回りには見知った兵士の屍が目に入った、父の近衛兵達であった。
 彼等が倒れているという事は、既に父の下まで敵が寄せているという事か。
 少年は、重い身体に力を入れ通路を進み広間に出る。
 そこで見たのは、雄叫びを上げる屈強な兵士と、その前に膝を付く父の姿だった。
 「父上!!」
 咄嗟に飛び出した少年に、兵士が目を向ける、頑強な甲冑に身を包み、鉄鎖の付いた星球武器を持つ兵士。
 「領主の小僧か、手柄首が二つとはツイてるぜ。」
 兵士が吼え手にした鉄球が少年を襲う。
 少年は転がってそれをかわすが、直ぐに次の攻撃が少年に向けられる。
 次々と襲う鉄球をかわし続けるも、振り回される鉄球のため間合いを詰める事が出来ない。
 「鼠みてぇに逃げ回りやがって、くたばりやがれ!」
 咄嗟に手にした剣で鉄球を防ぐ少年、しかし此処に至るまで幾多の敵を屠ってきた剣は、遂にその中程から砕けてしまう。
 武器を失った少年を、笑いながら追い詰める兵士。
 少年はその隙を見逃さなかった、力を蓄えた脚で父の下に跳ぶと、父の剣を手に兵士に斬りかかる。
 少年の思わぬ反撃に、手にした鉄鎖を盾にする兵士。
 しかし少年の振り下ろした剣は、鉄鎖を断ち切ると、その甲冑ごと兵士の胸を貫いた。
 
 「父上!!」
 血を吐き倒れる兵士を余所に、父の下に駆け寄る少年。
 膝を付いたまま頭を垂れる父、領主は既に死んでいた。
 その屈強だった身体は血に染まり、少年にとって逞しく見えていたその腕も、今や力無くだらりと垂れ下がっていた。
 唇を噛み手にした剣を見る少年。
 それは、家に代々伝わる領主の証であった、幾多の戦を経たこの古い剣が、想像以上の業物であった事に少年は驚いた。
 「父上、この剣お借りします。」
 領主の息子として守るべきであったこの砦はもう落ちる、しかし自分には未だ守るべきものがある。
 少年は、父の遺骸に礼を取ると、姉の私室へと駆け出して行った。

 父の屍を後にして以来、敵兵の姿を見る事はなかった。
 少年はただひたすらに廊下を駆け、姉の下に急ぐ。
 そして、ようやく姉の部屋にたどり着くと、一気に扉を開け部屋に駆け込んだ。
 「姉上!」
 しかし、そこで少年が見たのは、数人の兵士の姿だった。
 そのいずれもが、部屋を荒らし、宝石やドレスを漁っている。
 「おい、なんだ貴様。」
 部屋を見渡した少年に、兵士の言葉は届いていない。
 少年の目は、部屋のベッドの上に釘付けとなっていた。
 そこには、少年の愛する姉の姿があった。
 しかし、その姿は少年の知る姉のものではなかった。
 身に纏った白いドレスは、無造作に引き裂かれ、その美しい肌を露にしている。
 淑女とは思えぬ格好で四肢を投げ出し、いつも穏やかに微笑んでいたその顔は、恐怖と苦痛を焼き付けたまま固まっていた。
 その身体は白濁に汚され、陵辱の末に殺されたのは明らかだった。
 「返事ぐらいしたらどうだ、こぞッ…」
 少年に近付いた男の首が、一瞬にして宙に飛んでいた。
 「うおおおおおおおおっ!!」
 雄叫びと共に、少年はその場に居た全員を切り伏せる。
 傷の痛みも身体の重さも感じない、衝動のまま何度も何度も剣を振るい、兵士達は只の肉片となていた。
 気が付けば、何時もの戦場と同じく、身体が熱くなっているのを感じていた。
 それも、今まで経験した事がない程の熱さ、まるで身体が焼けてしまうかの様である。
 「姉上…」
 少年は、変わり果てた姉の姿を見ていた。
 それは、少年が愛した、美しく優しい姉の姿ではなくなっていた。
 少年は思った、これではまるで、自分が戦場で蹂躙してきた女達の様ではないかと。
 「はは、ははははは。」
 何故か、笑いがこみ上げて来た。
 幾ら高潔な魂も、美しい魂も、戦に負ければ等しく蹂躙され朽ち果てるのだ。
 少年は、姉の亡骸が横たわるベッドに火を掛ける。
 と同時に、大勢の足音が近付いてきた、おそらくは少年の後を追ってきた敵兵だろう。
 焼けるほど熱い身体で剣を握る。
 「クク…ハハハハハハハハハハ…いいだろう、お前達…蹂躙してやるよ。」
 少年は、燃え盛る炎の中、敵兵の中に飛び込んで行った。

 それから二十年の時が過ぎた。
 この戦で帝国領の一角が崩れたのを切っ掛けに、戦は全土に広がり、今や帝国も幾つかの勢力に分割され、大陸は其々が覇権を争う大乱となっていた。
 そして、今またこの地での戦に奔走する傭兵団が、山沿いの街道を行軍していた。
 荒々しい野獣の様な男達を率いているのは、口髭を蓄えた屈強な男である。
 「大将、どうかしたんですかい?」
 髭男に轡を並べた傭兵が、声を掛ける。
 「ハ、気にする程の事でもねえさ。」
 髭男の視線を追う…と、そこには山裾に朽ち果てた城砦があった。
 「ああ、あれですかい、なんでもかつての領主の居城だったらしいですがね、二十年前の戦で領主と一緒に焼け落ちたらしいですわ、まあ、今時珍しくもない、よくある話ですわ。」
 「クク…ハハハハハ」
 傭兵の言葉に声を上げて笑う髭男、一方、傭兵は呆気にとられている。
 「ハハ、まったくその通りだ、よくある話じゃねえか。」
 「よし、おめぇら!次の戦地まではもうじきだ、獲物は好きにしていい、気合入れて行くぞ!」
 雄叫びの中、傭兵団は次の戦場へと思いを馳せていた。